東京都 Ｔ．Ｋ（２３歳 大学生）
この体験修行に参加しようと決心したのは先週の土曜日だったと思う。実はこの出世観音の体験修行のことは、インターネットのホームページで一年以上前から知っており、興味はあったのだが、３万円の入行費を払ってまで参加してみようという気にはなれなかった。
まだ当時は、「先があるさ、そのうちなんとかなるかもしれない。」という甘い考えを持っていたと思う。障害を乗り越えようという努力をせず、自分の殻の中にとじこもり、結局時間が過ぎていくだけであった。大学に入学した当初は、それなりに壁を乗り越えようとしていたかもしれない。サークルの新歓合宿に参加してみたり、アルバイトして旅行に行ってみたり・・・・。しかし、そこでも、うまく人間関係を構築できずに、自信を失ってゆくだけだった。
常に自意識だけが一人歩きし、他人と自分との間に壁を勝手につくりよけていた。そうしていく内に、時間だけが流れ、完全に自信も気力もなくしてしまった。
５年という歳月はあっというまだった。この間に得たものは何もない。ただ無駄に時間を浪費し、今現在ここにいるのは、ほとんどぬけがらのような自分だった。
そろそろ大学生活も終わりに近づき、今までのように何もせずに時間だけが経つのをアパートの部屋で待つという状態が許されなくなる今、(消極的な意味で)何とかしなければならない、と思っていたこの頃、半ば酒に酔った勢いで、この体験修行に申し込むことになった。申し込んだ当初は、この体験修行が終わった時に何か劇的な変化が訪れているかもしれないと期待していた。
今まで本気になってなにかをやり遂げたことのない自分だが、厳しい環境に身を置き、厳しく説教してもらえば、変わらざるをえないだろうと思っていた。しかし予想に反して、お上人は温厚そうな方で、厳しく自分を問い正すというよりは、現在の自分の姿を見抜き、それをスパッとといい当て、どうすればよいのかを助言されるのであった。
初日に内観行を通して、自分の姿を明らかにするにつれ、暗い気持ちになっていった。自分の中から、良いと思える点をしぼり出そうと思っても頭に浮かんで来ない。浮かんで来るのは、自分の嫌いな面ばかりだったが、さらに自分を暗くしたのは、その中に大学に入ってからの５年間の経験が、ほとんど含まれていないことだった。無意味に５歳年をとったことが、自分をどうしょうもない思いにさせた。
２３歳という年齢は、やり直すには手遅れだと思っていた。「自分という人間の骨格ができあがった今大きく方向転換することがど自分にはできない。ましてや、方向転換するだけの気力もエネルギーもない」と考えていた。
このような自分に対して、お上人は夢を持つことの必要性を説かれた。夢を持ち具体的に行動することで生きる気力がわいて来るのだと。今の自分に夢を持つことは可能だろうか。ここで座って感想文を書いている今、ほとんど不可能にも思える。夢に向かって具体的に行動している姿を想像することができない。社会に対しほとんど興味を失っている自分には夢など絵空事のように思える。今現在の自分の頭の中も半ば眠りからさめていないかのように、ボウッとしたままだ。厳しい修行を通しても、自分の堕落ぶりを実感するだけで、自分を克復しできたかどうかは自信がない。自身を克復し、フッ切れることはなかった。ただ、自分の意識の中で変化が生じた。
「自分が特別な人間である必要はない。特別であろうとするから無理が生ずるのだ」ということ、また、「実際に頭の中で悩むよりも具体的に行動するのだ」ということ、そして「２３で人生をあきらめるのはまだ早いのだ」ということ、特に三つ目は、ひそかに期待していたことだった。
自分の人生を振り返れば常に後ろ向きだったように思う。それまでの生き方のつみ重ねが自分を作り上げている。そのため、それなりの生き方しかしてこなかったのなら、現在の自分もそれなりなのだ、という認識しかなく、決して未来をむいたことがない。 こういった認識は常に頭の中で悩むことが先行し、具体的に行動することがなかった故に生じたものだ。傷つくことを恐れず具体的に体を動かしてみることによって、このような自分の思考パターンが変わるかもしれない。
とりあえず体を動かしてみようと思う。頭の中でいくら悩んだとしても、なんの解決法にもならないことはずっと分かっていたことだ。ただ勇気がなかった。この三日間で、自分を変えることはできなかった。しかし、変えるための足がかりは見つけられたように思う。戻ったら、もう一度、今回の体験を振り返って行動に移してみようと思う。
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