徳島市 Ａ．Ｏ（２０歳 大学生）
インターネットでこの体験修行を知ったとき、ほとんど何も考えずに申し込みをしてしまいました。後でよく見ると、住所が千葉とあって、あまり遠出したことのない私は冷や汗をかきましたが…。色々と交通手段を調べてきたものの、初日は時間に少し遅れてしまい、皆様には迷惑をおかけしました。
前から「尼僧になりたい」という思いを持っていたので、取りあえず、「お寺の修行がどんなものなのか知りたい」という思いで来てはみたものの、もともと正座が苦手だった私は、一時間足らずのお勤めにもじっと耐えることができず、足を組み替えたり腰を浮かせてみたりで、ちゃんとお題目を唱えることができませんでした。「行中は毎日二十時間正座しっぱなし」とお上人から伺って、「今から正座になれておかなくては…」と心に誓いました。
そして２日目は、自分の内面が驚くほど変わった日であったと思います。昼のお勤めが終わったとき、お上人から「あなたの先祖の中に宗教的なことに関わっていた女性がいた」とおっしゃり、それを聞いた瞬間、自分でも何故かわからないうちに涙が溢れてきました。その人の思いが何らかの形で自分に向けられ、大きな影響を受けているということです。今まで、「尼になりたい」と漠然と思っていましたが、人にその理由を聞かれても上手く答えることができない自分に歯がゆい気持ちがありましたが、この不思議な出来事で、それが少し納得できた気がしました。
その夜、寝る前にトイレへ行こうとして、何気なく山の景色を見た途端、何とも言えない感動のようなものが内面からこみ上げてきて、思わず両手を合わせていました。自分を包んでいる世界全てに言い表せないくらいの感謝の念が後から後から沸き上がってきて、頭の中が「有り難い」という言葉で一杯でした。嬉しさとも幸福感ともつかない思いで涙ぐみながら、暫くその場で四方に向けて手を合わせ続けていました。今まで、何となく自分の存在に不安を感じていたのが、とても馬鹿らしいことに思えました。このとき、生まれて初めて、「自分はこの世界に生かされているんだ」と思うことができました。寝袋に入った後も感動はおさまらず、涙が止まらないまま眠ってしまいました。
残念なことに、朝起きると、その時の感動はほとんど消えてしまっていたのですが、今まででは全く感じられなかった静けさ、自分がとてもしっかりと感じられる落ち着きのようなものが替わりにありました。表面的にはよくわからないけれど、「自分の奥の方で何かが少し変わったな…」、そう思う一日でした。
この三日間の修行を通して、自分の心が揺れ、悲しさではなく嬉しさを感じて、不思議と何度も涙ぐみそうになるのを経験しました。短い三日間の期間でしたが、ここで体験修行をしたことで、今まで考えもしなかったことが感じられるようになった、そんな気がします。
とても充実した三日間でしたが、一つ心残りなのは、大きな声でお題目を唱えることができなかったことです。「もっと大きな声が出るはず」と言われ、頑張ってみたのですが、自分で納得のいくような声は結局出せませんでした。けれど、お題目を唱えている間は（足の痛みはやはり辛いですが）何となく気分が良く、終わったときにはへたり込んでしまっても、暫くして足の痛みが消えると、「また少し唱えたいなー」という気になります。お勤めが始まれば、またすぐに足が痺れてしまうのですが…。
今は、以前のように「すぐにでも尼になりたい！」という焦るような気持ちはなく、そのかわりに「自分は尼になるだろうな」という予感のようなものがあります。今はただ「毎日が修行」と肝に銘じて、広く世の中のことを学んでいきたい、そう思っています。「人は懇願してこの世に生まれてきたんだ」というお言葉が胸に残りました。それならば、きっとどんなに苦しいことにも頑張って立ち向かっていけると思います。
何年先になるかわかりませんが、いつか必ず私は尼になります。
明るい笑顔で色々なお話を聞かせて下さり、そして私の因縁に気づかせてくださったお上人、毎日美味しい（本当に美味しい！）食事を作ってくださった奥様、本当に有り難うございました。一人暮らしで手抜き料理ばかりの私には、凄いご馳走ばかりの三日間でした。
今は、早く徳島に帰って、お世話になった人達に心から御礼を言いたいという思いと、もう少しここに残りたいという思いで、とても複雑な気分です。
けれど、そのうち、また三日間お世話になりたいと思っています。その時にはちゃんと正座もでき、大きい声も出せるようにしておきますので、どうかまた宜しくお願いいたします！
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