東京都 Ｋ．Ｔ（３６歳）
私は、２年前勤めていた会社を退社、その後独立開業しました。しかし、いざ自分で事業を始めてみると、なかなか思い描いていたようには事が運ばず、時にプレッシャーに押しつぶされそうになりながらそれでも、どうにか細々と続けてきていましたが、なかなか軌道に乗るような明るい兆しも見えず、日々悩んでおりました。
そんな私を見て、妻が「修行でもしてきたら？何か少しでも変わるかもしれないよ」と言いました。妻は、少し前に巨人の清原選手がどこかのお寺へ行き、修行をしてきた事を思い出し私にその様なアドバイスをくれたのでした。妻は半分冗談で言ったのですが、私自身も、漠然とではありますが、それに近いことを考えていたので、早速、インターネットでその様な事をやっているお寺を探し、こちらの３日間体験修行を知り、是非、参加してみよう、と思ったのです。何度かの連絡の後、「善は急げ」で、一番早い日程を選び、すぐ翌日から参加することにしました。
修行の内容などは、インターネットでも紹介されており、また、体験記なども出ていたので、だいたい把握はしていましたが、「自分に出来るだろうか」という不安より、「これで何かがつかめれば」という期待の方が大きかったと思います。
初日の午前９時過ぎ、観音橋を渡り、参道の階段を見上げたとき、不思議と心は落ち着いていました。入山してからは、終わってみればあっという間の３日間でしたが、この間の経験の１つ１つは私にとってとても新鮮で貴重なものとなりました。
修行の間の正座は、ある程度は耐えられると思っていましたが、初日８時間の行で、足の感覚はほとんど無くなり、あと２日間の正座は本当に苦痛でした。１時間から３時間、正座の姿勢を保ち続けることの難しさ、辛さから、普段ほとんど拘束のない生活で忘れていた”自由に行動できる有り難さ”を実感する事が出来ました。
お経を唱える声も、自分で思うほど、上手く発する事が出来ず、「なんでこんなにも声が出ないものなのか？自分の声なのに自分の思い通りに声が出ない」．．．．普段会話をする上で、このように感じたことはなかったので、すごく意外な感じがしました。お上人の「腹の中から出して脳天に抜くように」とのアドバイスで、どうにか最初よりは出るようになりましたが、声を出すという事１つをとっても、大変難しいと実感致しました。
３日間、行で、日常から一切離れ自分を見つめ直す貴重な時間をもつことが出来ました。中でもお上人から頂いた有り難い講義の１つ１つは、自分の現状に照らし合わせ、今までの自分を少しずつでも変えていこうという、きっかけに充分なったと思います。
例えば、他人を頼らない当てにしない、グチを言わない、常に感謝の気持ちを持つ、因果応報＝自分で思い描くことは現実となって現れる、よってマイナスな思考はしない、先祖に対する感謝を忘れない．．．などなどです。このような事は、一見、誰もが頭の中ではわかっていることだと思います。しかし、身をもって自分の体験を通して実感しないことには、なかなか行動は伴わないのではないでしょうか。
実際に私自身も、ここ数年、何に関してもマイナスに考えるクセがついてしまい、事あるごとに、妻から「またマイナスな事ばっかり言ってる．．．もっと、前向きに良い方向に考えなよ」と言われ続けていました。そして、自分でも、頭では「プラスに考えなくては」とわかっているのですが、日常の些細なことに関してすら、出てくる言葉はどちらかというと、マイナス思考の言葉が多かったと思います。
話はそれますが、行を終えて帰ってきた２日後、ちょうど日曜日だったので夫婦でどこかで外食でもしよう、という事になり、どこへ行こうかと話合っていた時のことです。妻が、ＧＷ中に行った、高かったのにまずかったお店の事を思いだし、「そういえば、＊＊＊＊は、高いのにまずかったよねー」と言って来たのですが、私は、続けて話そうとする妻の言葉をさえぎり、「もう２度と行かないんだから、いいじゃん。そんな、２度と行かないところの話をしたって時間がムダなだけだよ。」と言いました。
この私の態度に、妻は、「すごい！！プラス思考になってる！！今までなら絶対そんな事いわなかったのに！」と驚きを隠せない様子でした。このように、自分でも無意識のうちに、自分の中で何かが確実に変わった事は、確固たる事実なのです。これを読まれているみなさんは、「そんな小さな事．．．」と思われるかもしれませんが、その様な日常の小さな事の積み重ねが、結局は大きな結果を生むのですから、身近なところ、小さな事にも感謝の気持ちを忘れることなく、常に前向きに進んで行こうと思います。
足の痛みは日を追って消えて行くでしょうが、ここでの体験、まさに体で体験した事１つ１つは、私の人生においての大きな経験として一生涯残る物になりました。
最後になりましたが、行での毎回楽しみにしていたのが食事です。行を体験された皆さんそう思われると思うのですが、お粥があんなに美味しい物とは思いませんでした。毎回、本当に美味しく頂きました。奥様、ありがとうございます。
是非また、出世観音を訪れようと思います。その時が今から楽しみです。
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